中国で新型コロナウイルスの感染拡大が確認され始めた2020年1月は、日本の正月休みにあたる春節の長期休日前にあたり、中国国内での旅行者が最も多くなる時期と重なっていました。急速な感染拡大の危機に直面した中国政府は、国内感染の封じ込めが急務となりました。一瞬の猶予もない中、膨大な数の課題が山積しているこの危機的状況において、中国政府がまず取り組んだのは、大量の医療資源(数十万人を収容可能な移動病院はもちろん、検温やコロナウイルス検査など)を、全国から武漢市へと、急ぎ10日間で集めること、そして、この感染地域を過去14日間に行き来した何億もの人々の移動経路を特定することでした。この移動経路の特定は、特に困難な作業となりました。
中国では、政府が政策を決定する際には、高度テクノロジーを活かしたビッグデータ分析が広く活用されており、新型コロナウイルスとの戦いにおいても、こうした分析が使われていました。新型コロナウイルスの感染者数とその広範囲な位置を確認し、感染の拡大状況を把握することが出来るモバイルアプリを作成、ここにもビッグデータ分析が活用されています(下図は、テラデータのTeradata Vantageが示す感染の拡大状況をリアルタイムで追跡したマップです)。また、ソーシャルディスタンスに適応しなければならない自宅待機の期間中、モバイル決済やオンラインショッピング、宅配、遠隔医療、テレワークなどのオンラインサービスによって、自宅にいながらも普段通りに過ごすことを可能にしました。
図1. テラデータのTeradata Vantageが示す感染拡大経路
中国は、国家戦略のコアバリューとして科学技術を柱に置いています。近年、中国西部に新しいデータセンターが建設され、ビッグデータ分析をより広い範囲で活用し、中国の社会生活と経済発展に価値をもたらしています。こうした国家統治の取り組みによって、新型コロナウイルスの感染抑制にデータが重要であることを証明することとなったのです。
それでは、感染拡大時のビッグデータ分析の適用例と、将来期待される活用方法を見ていきましょう。
中国での新型コロナウイルス感染抑制においてデータ・アナリティクスが持つ価値
(1) 通信業界:データ・アナリティクスで感染者の移動を監視
新型コロナウイルスの感染拡大後、中華人民共和国工業情報化部は、データサービスの提供のため感染抑制と規制に対するワーキンググループを立ち上げ、政府と各省の間での情報共有を行いました。テラデータのビッグデータプラットフォームに基づいた、データ・アナリティクスにより人流データ(特に湖北省や感染が拡大している他の地域から出入りした人の流れ)のパスマップが作成され、これらのマップから、過去14日間に新型コロナウイルス検査で陽性反応が出た人の流れを追跡し、濃厚接触者の特定が可能となりました。この結果は、地方自治体やコミュニティによる感染防止措置の実施に役立ちました。
同時に、地下鉄や公共交通機関から入手した交通データと統合して、アルゴリズムモデルを使いウィルスの予測伝染経路をシミュレーションし、人々が仕事に復帰した際の人口密集地域における感染拡大リスクを予測。そこから感染拡大リスクを抑えるには、密集率を通常の稼働日の60%未満とする必要があることがわかりました。結果、人々が仕事に復帰した際には、時差通勤の措置実行することが決定されました。
(2) 銀行業界:データ・アナリティクスにより、コロナ禍対策として、中小企業支援策の対象融資や利息救済サービスを促進
コロナ禍で経済的打撃を受けた中小企業への支援策として実施された、融資や利息救済サービスは早急にそして的確に行う必要があり、テラデータのデータ・アナリティクス基盤ソフトウェアTeradata Vantageのデータ分析が活用されました。例えば、ナレッジマップ分析を使用することで、事業存続が厳しく銀行の支援を必要とする企業を特定し、銀行の融資許可や、承認プロセスの短縮を実現しました。リスクコミュニティ分析の使用では、サプライチェーンで最もコロナ禍の影響を受ける企業を特定し、銀行がこうした企業に優先的に融資または金利救済サービスを提供することで、サプライチェーンの至る所での倒産が起きることを回避するのに役立ちました。さらに、リスク管理の観点から、保証サークルのリスク分析を使用して、保証関係を特定・管理し、大量の債務不履行を防ぐことを実現しました。
(3) 公益事業:電気、水道、ガスなどの公共サービスで、データ・アナリティクスを使って地域管理を支援
利用者の電力消費に関するデータを収集し、地域ごとに異なる期間の電力消費を分析することで、各家庭での電力消費の差を特定できます。電力の消費変動は、住民の生活環境に影響を与えるため、隔離期間での重要な検討事項となります。例えば、自宅隔離期間が短期の場合と長期の場合とでの対比、家族が戻ったとき、隔離された人の移動など様々なシナリオを異なるアルゴリズムモデルと組み合わせて、いつでも、どの地域でも、日々の人の流れや分布を正確に決定付けることができます。
(4) 医療と健康:医療分野でのデータ・アナリティクスを適用したCT画像認識率の向上と特定の医薬品の研究開発の支援
例えば、新型コロナウイルスによる300症例の肺炎CT画像診断には、経験豊富な医師でも、1症例あたり約5〜15分かかります。そこで、CT画像の症例サンプル履歴データにAI技術を使用すれば、AIはサンプルのフォーカステクスチャを学習し、感染が疑われるケースのCT画像を90%以上の正確さで解明し、診断効率の大幅な向上を実現することが可能となります。
GHDDI(世界健康薬品研究開発センター)は、清華大学の薬学部が開発した人工知能を活用した薬のR&Dプラットフォームを備えており、これを中国の医薬品研究者に無料で公開しました。さまざまな段階での新型コロナウイルス研究に関係する900以上の小分子の情報を含む詳細な実験データや、過去の臨床試験からの参照データを研究者に提供することで、感染症治療薬の研究開発サイクルの短縮を可能にします。
中国では、新型コロナ終息後にデータ・アナリティクスの急成長が見込まれる
データ・アナリティクスは、2020年における新型コロナウイルスの感染抑制に役立っています。この「新しいインフラストラクチャ」は、新型コロナウィルスの世界的な流行とそれによる経済の後退に対処する最も効果的な方法となったことで高く評価されています。中国は、5Gネットワークや人工知能、ビッグデータセンター、その他のインフラストラクチャの迅速な構築を呼びかける姿勢を明確にしています。中国が5Gネットワーク構築に成功したことで、モノのインターネット(IoT)、インテリジェントメディカルケア、遠隔教育、自動運転、人工知能、仮想/拡張現実、スマートシティ、インテリジェントアグリカルチャーなどのさらなるデータ・アナリティクスが可能となります。この先端技術開発が、中国の経済成長を促進することになり、社会生活においても、さらなるインテリジェントソサエティに向かって後押しすることとなるでしょう。国家統治に関しても、科学技術の役割はますます顕著となり、近い将来、中国ではデータ・アナリティクスが急激な成長を遂げることが予測されます。
テラデータはデータ・アナリティクス分野でのリーディングカンパニー
テラデータは、データ活用分野においてプロフェッショナルなソリューションプロバイダーであり、40年以上にわたってアナリティクスエコシステムの構築に取り組んできました。データインフラストラクチャを作り上げるには、ハードウェアプラットフォーム、ソフトウェア、データベース、関連ツール、およびあらゆる種類のアルゴリズムと最適化されたコンピューティングモデルに精通しているデータサイエンティストを含む、関連技術を習得した技術コンサルタントの専門サービスが必要です。そのため、ビッグデータプラットフォームの構築とサービスには莫大な投資が必要となります。
しかし、データ・アナリティクスの段階においては、投資額は比較的少ないことがわかりました。通常、データ・アナリティクスのシステムを開発したIT部門には、一般のビジネスユーザーはアクセスできません。つまり、データの価値を十分に実感することはできませんでした。
その主な理由として、データ利用のプロセスには、データ取得、データ分析、そしてデータマイニングが必要なことが挙げられます。特にオープンソースのビッグデータプラットフォームやマイニングツールのアプリケーションにおいて、多くの専門的スキルの習得が要求され、これには強力な技術的バックグラウンドが必要です。その結果、技術的バックグラウンドを持たないビジネス担当者や管理担当者は、データシステムの構築に携わることに消極的になります。また一方で、信頼できる機密データシステムの構築には、関連する管理システムや法的枠組みがないため、データを社内外で相互に利用するのに制限がかかることが挙げられます。
新世代のデータ・アナリティクス基盤ソフトウェアであるテラデータのTeradata Vantageは、データ統合に基づくビッグデータプラットフォームであり、複数のアルゴリズムを組み込み、高度な処理性能を備えています。これは、ビジネス担当者に、「ランダムデータ取得やセルフサービス統計分析、リッチグラフィックプレゼンテーション」のエンドツーエンドのデータアプリケーション提供を可能にします。テラデータは、企業向けの専門的なデータ管理サービスを提供し、顧客のビジネスデータの分類や設計を行い、カスタマイズされたデータ資産管理ソリューション一式を提供することも可能です。様々なデータカテゴリーに沿って、企業は対応するデータアクセスシステムの開発ができるため、社内データは、データの価値を最大限に発揮しながら、秩序だった安全な方法での活用が実現します。
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