概要
クラウドコンピューティングとクラウドストレージを分離する効果
クラウドコンピューティングとクラウドストレージは、独立していても、連携する必要があります。デカップリングによって柔軟性と価値が最大限に発揮される方法をご覧ください。
データの量と複雑さが増すにつれ、クラウドの利用はもはや疑問の余地がありません。しかし、企業がクラウドへの投資を最適化し、変動するビジネス、市場、顧客の要求に迅速に対応する分析インフラストラクチャを構築しようとすると、多くの疑問や課題が出てきます。
クラウドソリューションを評価する際に企業が下すべき重要な決定事項の一つは、クラウドのコンピューティングとストレージを分離するかどうかです。企業は、複数のソースから流れてくる大量のデータを管理し、多くのアプリケーションで活用するために、もっともコスト効率が良く、パフォーマンスの高い方法を探しています。クラウドコンピューティングとストレージを切り離さなければ、企業は両方を同時に拡張しなければなりません。ストレージに流れ込むデータやコンピューティングノードで分析されるデータの価値がわからないと、コンピューティング容量やストレージ容量を増やすことが追加コストに見合う価値があるかどうかを判断するのは困難です。また、企業がハイブリッド環境で展開している場合、クラウドとオンプレミスのストレージとコンピューティングの両方をスケーリングすることは、すぐに複雑になり、ビジネス上の貴重な人的時間とリソースを失うことになります。
クラウドコンピューティングとストレージを個別に拡張することで、企業はより焦点を絞ったコスト効率の高い戦略的判断を下すことができます。しかし、分離し独立しているからこその課題もあります。クラウドコンピューティングとストレージは、独立している場合でも、連携して動作する必要があります。データストアとオブジェクトストア間の通信を切り離すと、不必要なデータ移動や重複が発生し、レイテンシー率が高くなる可能性があります。
これらの機能を分離する複雑さと、それらの課題を克服する方法について詳しく理解するために、まずはこのジレンマ自体の歴史を見てみましょう。
コンピューティングとストレージの歴史を振り返る
クラウドの登場により、データ管理においてクラウドコンピューティングとクラウドストレージを分離することが理想的かどうかという問題に新たな局面が加わりましたが、実はこの議論は何十年も前から存在してきました。
ソフトウェアシステム開発者のAdam Storm(アダム・ストーム)氏が説明するように、歴史的に見ると、コンピューティングとストレージは、もともと航空券や銀行などの業界でのトランザクション処理のために設計されたデータベースシステムの中で密接に結合されていました。このようなシステムでは、トランザクションデータの永続性と整合性を確保するために、レイテンシーが短いことがもっとも重要でした。コンピューターの黎明期のネットワーク速度を考慮すると、レイテンシーを抑えるためには、ストレージをできるだけコンピューティングに近づけることが重要でした。
その後の数十年で、企業はデータベースを単なるトランザクション処理以上に活用するようになりました。企業や政府のリーダーたちがデータの価値を認識して洞察力を高めるようになると、システム間で大量の情報を保存するためのデータウェアハウスが登場しました。また、洞察力を引き出すために複雑な分析クエリが頻繁に実行されるようになりストレージとコンピューティングで低レイテンシーとコストが重要な優先事項になりました。
今日、ネットワークとストレージの帯域幅がメモリ帯域幅よりも早く増加していることを考慮すると、多くの企業が、ストレージとコンピューティング機能にそれぞれ独自の要件がある場合に、それらを一緒に拡張するのが難しいことを認識しています。
理想的なバランスを取る
データとユーザーの両方からのダイナミックで常に進化する要求に対応するために、企業はコンピューティングとストレージを分離しつつ、シームレスなコミュニケーションと互換性を可能にするアーキテクチャを必要としています。これを効果的に行うためには、エンジン、データストア、オブジェクトストアをつなぐ高速ファブリックがプラットフォームに必要です。これにより、データノードとコンピューティングノードが連携しながらも個別に動作できるような統一されたレイヤーが形成されます。
データとコンピューティングが一体となって1つのシステムとして機能することで、データの移動や重複を最小限に抑え、企業内でのデータの共同利用や共有が容易になります。同時に、これらの機能を独立させておくことで、データの急激な増加に対応する基盤となり、ダイナミックなスケーリングが可能になります。ストレージとコンピューティングを分離したデータクラスターのスケーリングは、これらの機能が密接に結合したシステムでは数時間から数日かかるのに対し、わずか数秒で完了します。
分離によるビジネスへの影響
ブラックフライデーや四半期末など、トラフィックが集中する時期には、ストレージを比較的一定に保ったままコンピューティング機能を拡張する必要があります。これらの機能を独立して拡張することで、企業は使用した分だけ支払うことができます。
Micro Focus社のバーティカル・プロダクト・マーケティング担当シニア・ディレクターのJeff Healey(ジェフ・ヒーリー)氏によると、ある小売業者では、年間を通じてピーク時のワークロード用にプロビジョニングするのではなく、コンピューティングをストレージから分離することで、コンピューティングのコストを約66%削減できるとのことです。
短期間のプロジェクトを遂行する企業にとって、必要のない時期にコンピューティングノードをシャットダウンして「休眠状態」にすることで、コスト削減につながることを想像してみてください。たとえば、医療機器メーカーでは、新しい機器を市場に投入する前に、このような方法を取ることができます。主要な顧客を対象に小規模なトライアルを行うことで、その機器が広く市場に投入されたときに最大限に信頼性を確保することができます。
また、何十万人もの顧客に影響を与える吹雪に対応する通信会社の場合を考えてみましょう。この会社では、ストレージとコンピューティングを別々に拡張することで、コンピューティングノードを迅速に増やし、分析能力を向上させることができます。これにより、サービスの問題を迅速かつ正確に診断したり、障害が発生してサポート担当者に連絡する顧客を予測したり、嵐が顧客の解約に与える影響を分析したりすることができます。
今日の企業にとって、 アジリティはデジタルトランスフォーメーションを実現するための重要なステップです。ハイブリッドクラウド環境でもパブリッククラウド環境でも、クラウドストレージをクラウドコンピューティングから分離することで、企業は一貫したデータ要件に加えて、変動するニーズや不測の事態にも柔軟に対応できるようになります。